拝啓 天国に居るマリアンヌ母様

お久しぶりです、元気ですか?ルルーシュは元気です。 ナナリーは良くも悪くも変わっていません。 先日スザク達がラウンズの特権を使ってあわせてくれました。 ちょっと見直したりしたけど結局またセクハラされたので正直言ってもううんざりです。 でもアーニャは可愛いので許します。 ナナリーは相変わらず可愛くて、清楚で、可憐で、優しくて、もうとにかくこの世の幸せを詰め込んだような子です。 面影も段々母様に似てきて嬉しい限りです。 そうそう、母様は我らヴィ家の後見を努めてくれていたアッシュフォードを覚えていらっしゃいますか? よく一緒に遊んでいたミレイはすっかり大人っぽくなって、この前ようやく卒業しました。 単位が足りなくて留年だそうですが、 私からしてみればモラトリアムを楽しみたいがためにわざと単位を落としたんじゃないかと思っています。 まぁそんなこんなでミレイは相変わらずお祭り大好きですが、そんなミレイにも私はいい加減イライラしています。 天国に居るマリアンヌ母様、答えてください。
何でミレイの陰謀でラウンズ二人に二股かけなきゃならんのですか???

敬具 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア



一昨日きやがれ恋敵!3



ルルーシュは逃げていた。 そりゃあもう全力で逃げていた。 銃弾が飛んでくるわけではないのだから意味は無いのに、 外の情報全てをシャットアウトするように絶対守護領域を展開させながら、ゼロ専用ドッグへ。 なんでってそりゃあ、セクハラ魔王から逃げるために騎士団の作戦を入れたはずが逆に相見える事態に陥ったり、 騎士団は暴走したり、頼みの綱かと思った星刻にはかのブルータスのごとく裏切られたりでなきたくなったからだ。 むしろ泣いた。 涙目だ。
しかしだからといって、天はルルーシュを救ってくれはしなかった。 戦い大好きな神様だって、傾国の美女であるルルーシュにはメロメロなのだ。 手篭めにしたいとかそういうことしか考えていない。 そんな神様の魔の手から最愛の娘を守るためにかの皇帝が戦っているなどと誰が思うだろう。 ひぃいいんとやけくそな泣き声を蜃気楼の中で響かせていたルルーシュだったが、次の瞬間、止まらざるを得なかった。 なんでってそりゃあ、目の前のモニターいっぱいに父の姿がドアップで映ったからである。

『ぬぁあああああらああああああああん!!!』
「ひぃっ!?」
びくっと盛大に身を震わせたルルーシュは、勢いでデリートのキーをポチっと押して、 目の前のモニターから父の姿を消し去った。 正直言って、今は男の顔など―――というか、女も―――見たくない。 一人にしてくれ・・・。 といった心境である。 だが、沈黙させたにもかかわらず、相変わらず蜃気楼への通信回路は繋がれようとしている。 皇帝の専用回路と、アヴァロンからと、斑鳩からと、その他ナイトメア勢からの通信だ。 このまま放っておけば通信回路がパンクすることがありありと予測できて、ルルーシュはしっかりとその眉間に皺を刻んだ。 そして大きなため息をついて、通信を開く。 もうばれてしまっているので意味は無いが、一応の防御策として仮面をかぶった。
「・・・なんでしょう」
『ルゥルゥウウシュ!!』
仮面かぶってるってことはゼロなんだよそれぐらい察しろバカ親父と罵りたいのをぐっと我慢して、 ルルーシュは相手をにらみつけた。
「・・・シャルル皇帝、貴方は」
『よいのだ、ルルーシュ』
「は?」
『なぜお前が再びゼロになったかどうかなんて、この際関係ない』
いつもとは違う、そのクソまじめな喋り方に ―――いつもの間延びした口調がとてつもなくイライラして腹立たしいというのに、いざ真面目なのになったと思ったら 気持ち悪いと感じる―――違和感を覚えて、ルルーシュは目を細めた。 なんだ?一体何を仕掛けてくる。 まさか全世界にゼロの正体を暴露する気か。 それともまたギアスをかけようというのか。 いやしかしギアスは鏡は効いても通信では無理だ。 となると残りの可能性は128通り・・・。


『パパのところへ帰っておいで!』
プチっ

虫が殺されたときのような小さな効果音である。 父の言葉の(あるいみ)暴力を全力で無視したルルーシュは、そのまま遠い、 どこを見ているのかわからないような目で再び蜃気楼を斑鳩に向けて発進した。 再びモニターが通信のアラームを鳴らしている。 パンクしては面倒なので、とりあえず繋げた。

『シュナイゼルゥウウウ!!!ルルが、わしのルルが』
『もう、ちょっと黙ってください父上。はーいゼロ、元気かい?』
ブチっ

虫というよりはゴキブリが殺されたときのようなそれなりに小さい効果音である。 幼い頃から自分にセクハラまがいのことをしてきた変態兄貴の顔?見たいなんてもんじゃない。 全力でデリートキーを押したルルーシュは、先ほどよりも早いスピードで斑鳩に向けて蜃気楼を発進させた。 その間も通信はどんどん送られてくる。
『ルルーシュっ』
ぷちっ
『ゼロッ!』
ぷっちん
『るーるーっ!!』
ブチ
『ルル、愛して』
プチン
『ゼロ、結婚し』
プチリ
繋げては消し、繋げては消し、を繰り返していたルルーシュだが、ちゃんと内容は聞いている。 内容と声を判断していらんと思った通信だけ即効消しているのだ。 本来ならばこの通信すら即効デリートになりそうなものだったが、 しかし、ルルーシュはまさかこんな人間にまで正体がばれているだなんて思いもしなかった。
『ハッハッハッ、ルルーシュ元気かい?オデュッセウス兄様だよ〜』
『久しぶりねルルーシュ』
『ルルーシュ姉さま、私も居るのよ!』

コッチン。
蜃気楼がついに停止した。 ルルーシュがキーボードをたたく手を全力で止めてしまったからである。 えーなんでおでゅっせうすとぎねびあとかりーぬがいるんだろう。 なんでぜろのかめんをかぶったわたしをるるーしゅだなんてよぶんだろう。 ちちうえあとでひゃっかいころす。 そんな言葉をつぶやく自分は、きっとはたから見ればひどく滑稽に映るのだろう。 アニメなんかだと敵のセリフ時やヒロインの変身時はいつも敵は優しく待っていてくれているが、 そんな事象は現実には起こらない。
あ、止まっちゃった。 ゼロ大丈夫かな、なんてその優しさを発揮している騎士団やその他ブリタニア勢がいる中で、 それを見逃さない人間が二人いたのだ。
「「・・・隙あり!!」」
ばびゅんっ!!という効果音をマジにつけながら、ランスロットを両脇から掴んだ二人―――スザクとジノは、 そのままランスロットとトリスタンを操りながら姿を消した。 ポカーンとその様子をただ傍観していた騎士団が、慌てたようにおいかけはじめるが、時すでに遅し。 二つの機体はもう遠く離れたところに行ってしまって、レーダーでは捕らえられなかった。 はるか遠くからあ〜〜れ〜〜〜なんてどこの悪代官と女のせりふだというような声が聞こえた気がするが、一体なんだろう。

神根島に到着したスザクとジノは、迷わず主電源をブチッと切ってどのレーダーにも機体が映らないようにした。 そしてわくわくと―――言及しておこう。他の人間から見てみれば人間業じゃないどころか、 気持ち悪い―――蜃気楼を生身で上った。 あまりの速さに、正直言ってムカデとかクモみたいにカサカサ音をたてていて、気持ち悪い。 本気で。 そしてまた人間業じゃない腕っ節でギギギギギゴギンなんて音を立てながら蜃気楼のハッチを開くと、 迷わず中に居たルルーシュを引っ張りだした。 ちなみにルルーシュを抱え上げるときに光速でじゃんけんが行われ、スザクが勝ったのは余談である。 恨めしそうにジノが見ている中、スザクは嬉々としてルルーシュをお姫様抱っこし、ぴょんぴょんと蜃気楼を降りていった。 意識があるにもかかわらず脳内がどっか遥か彼方に行ってしまっているルルーシュは、 憎き敵が目の前に―――ていうか自分を包み込んで―――いるという事実に気づいていない。 更にいうなれば仮面が取り払われていることにも気づいていない。 蜃気楼の足にちょこんと座らされたルルーシュはしばらく呆然としていたが、次の瞬間刺激にバッと意識を現実世界に戻した。 何でって、そりゃあ、プロテクターで押しつぶされているはずの胸をムニっと掴まれたからである。
ジノに。
ちなみにルルーシュが呆然としている間に、ゼロの衣装ははだけられていた。 プロテクターも取り払われていたりする。
「ひぅ・・・っ!?ぁ、ちょっ・・!」
「うわ、先輩もしかして感度いい?」
なんだ・・・!?とばかりに顔を驚愕と羞恥、そして言いようの無い感覚に染め上げたルルーシュを見て、 ジノがひゅう、と口笛を吹いた。 隣でスザクが座っているにもかかわらず器用に足を上げて、顔を潰し蹴ったが。 顔を真っ赤にしているルルーシュなど、二人は気にも止めていない。 ルルーシュがプルプル怒りに震えていることにも、涙が浮かんでいることにも、 ルルーシュの堪忍袋が切れ掛かっていることにも気づいていない。
「ちょっとジノ、その汚い手をどけてくれる?」
「ゃっ・・・あ、あっ、おい・・・!」
「なんだよーそういうスザクこそ触ってんじゃん」
「僕はいいの。ジノはどけて」
「んっ・・・ぉい、こら・・!」
段々とエスカレートしてきたその行為に、ルルーシュが涙ながら激昂したのも無理は無い話。 思いっきり、もてるだけの力で両脇のスザクとジノの顔を押しつぶした。



「っ・・・もうわかったから、はなせーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」




次の日のアッシュフォードタイムズには、 一面全体にルルーシュの頬に両側からキスを贈っているスザクとジノと遠い目をしたルルーシュの写真がドアップで 掲載され、タイトルは『あのルル好きぶりを垂れ流していたナイトオブラウンズ、ついにミス・アッシュフォードを篭絡!』 だったとかなんとか・・・。



「一昨日きやがれ恋敵!」は、三話これにて完結です! のえる様のリクエストでルルの胸は感度良しとのことだったのでセクハラを入れてみました。すいませんv(謝ってない) のえる様、こんなのでよければどうぞお持ち帰りくださいませ! リクエストありがとうございました!

2008年9月27日