「…うっ、く…」
 成長期の少年特有の、高低の入り混じった呻き声が上がった。
 窓に面したベッドは煌々とした月明かりに照らされている。縒れたシーツに映る様々な影の形の一つに、つま先でシーツを掻く足が加わった。
「…今、どんな気分だい、アルミン」
 艶やかな女の声が静かに響いた。色を知り尽くしている女の声だ。簡素ながらもきっちりと夜着に包まれた豊満な身体は、ベッドに腰掛けたまま、ほぼ微動だにしない。そんな彼女の前でズボンの前を広げられた、アルミンと呼ばれた少年は、快楽に吐息を震わせながらも従順にその問いかけに答えた。
「っ…く、つじょく、です…っ」
「…うん、それでいい、アルミン」
「ぅあっ」
 鈴口を弄る手に力を込めると、アルミンは堪えきれずに声を漏らした。目の前の上官を睨みつける。そんな彼の反抗にも涼やかに笑い、彼女は手を上下させるスピードを速めた。
「一度イキなさい」
「あっ、や、やめっ…うう、」
「良い子だから」
「えっ、える、エルヴィン団長!」
 彼の静止の声にも耳を貸さず、彼女はあっけなくアルミンの欲を強引に解放させた。
「っ…はぁっ、はぁっ」
 射精後の脱力感に肩を上下させるアルミンの頭を引き寄せ、彼女はそっとその頭を自分の膝に横たわらせた。滑らかな金糸を流れに沿うように撫でて行く。その心地よい感触に思わず瞼を下ろしそうになるのを堪えながら、アルミンはぎゅっと拳を握りしめた。
「アルミン」
 有無を言わせない、支配力に溢れる声に、アルミンはのろのろと顔を上げた。そこにあったのは罪悪感も後悔も感じさせない、涼し気な女の顔だ。アルミンが膝の上で収まりのいい場所を探そうと頭を動かした時に見せた、くすりと笑った顔以外、彼女の見せる表情は少なかった。
「エルヴィン団長」
 エルヴィン、と呼ばれたこの女性は、手練揃いの調査兵団を実力と信頼でもって取りまとめる鬼才の団長だ。女だてらに単身地下街へ乗り込み、『あの』リヴァイを手懐け連れ帰った事でも有名である。女性にしては大柄ではあるが、むしろ長身に見合った体躯と言えるだろう。事実、鍛え抜かれた身体に残ったやわさは少ないながらも、線は細く骨格は女性的だ。豊満な胸と色気のある顔立ちも相まって、不思議な魅力を否応無しに振りまく女性だった。
「私が憎らしいかな?」
 いつも頭上でまとめられている金糸が、夜半という事もあって、ゆるく結われて右肩に流されている。それをさらりと揺らして、エルヴィンはアルミンに問いかけた。
「…いいえ」
 未だにズボンの前が開かれたままという事実に頬を染めながら、アルミンは緩く頭を振った。
「自分で選んだ事ですから」
 そう言って、アルミンは悔しさをにじませた瞳でエルヴィンを見上げた。そこには微かな不安がある。安心させる様に強く頷いて、エルヴィンはアルミンの手を握ってやった。
「…今君が、身を以て知ったと思うけれど、人間の尊厳を踏みつぶす事なんて、簡単にできるものなんだよ、アルミン」
 エルヴィンはアルミンのズボンに手を伸ばして、そっと前開きを閉じてやった。だらしなく姿を見せていた陰茎をしまわれたという事実に、アルミンはカッと頬を染める。
「私がいま君に見せたのは、私が普段やっている事の片鱗だ。何も肉体的な暴力だけが支配の方法じゃない。性的快楽は痛みが無い分、ハマってしまいやすい物なんだ。女だってやりようによっては男を辱められる。今、私がきみにやったように」
 エルヴィンは手の甲にアルミンの残滓の固まりをみつけると、いやらしく笑ってそれを舐めてみせた。カッと頭の奥が熱くなる。
「男だって快楽の虜に出来るんだよ。それによって得られる支配がある。支配で得られる何かがある。そしてそれを必要とする時がーーー私にはある。人類の為に、調査兵団の為に……私は男に身体を委ねる事を厭わないし、酷くされても構わない。それでしか手に入れられない何かがあるならーーーその男が地位のある人物だろうが、妻子持ちだろうが、私には関係ないんだ。私の身体一つで兵士が一月食いつなぐ金が生まれる。わかるね?アルミン」
「はい、団長」
「けれど快楽を知らない人間が、快楽で人間を支配しようなんて馬鹿げているだろう?それによる絶対的な対価が欲しいならなおさらだ。私がまず君に、するよりされる側に回ってもらったのはその為だよ。ーーー屈辱的だったろう?アルミン。望まない自慰行為を、強制的に、他人の手で行われるんだ。君の陰茎の状態を逐一口にして、君が嫌だと言っても離さない。もっと欲しいと言外に強請れば、笑ってそれを躱される。恥ずかしくて、悔しくて、屈辱的でーーーでも、気持ちがよくって。君は私に逆らえない。私は女性で、君が最上級の礼を取るべき上官だから」
 うっそりと笑って、エルヴィンはアルミンの、まだ少しまろみの残る頬を指でつい、となで上げた。何の彩りもない、爪も短く切りそろえられた指であるのに、そこにはゾクゾクと背筋が寒くなるほどの色気があり、恐ろしさのあまりアルミンは肩をこわばらせた。
「アルミン、起き上がりなさい」
 有無を言わせぬその声に、アルミンは先ほどまでの倦怠感が嘘かのように力強く起き上がった。反射で、逆らってはいけないと身体が教える。
「来なさい」
 促され、アルミンはベッドから下りて冷たい板張りの床に跪いた。鍛えられた膝に縋る。太腿に頬をつけるようにして顔を伏せると、胼胝(たこ)のできた手がアルミンの頭を撫でた。凛とした声が、板張りの床を震わせる。
「ーーー後悔しないね?」
「はい」
「私は君を、私の後継者と定めた。君に私のすべてを教えるよ。覚悟はいいか」
「はい、エルヴィン団長」
 指で顎をつい、と持ち上げられ、アルミンは真直ぐエルヴィンを見上げた。自分のよりもよほど薄いアイスブルーの瞳が、冷たく見下ろしてくる。 

「君の心臓はどこにある?」

 エルヴィンが、アルミンの左胸をとん、と押す。アルミンはおもむろにその手を絡めとり、指先にそっと口をつけた。




花の蜜が死んでも



 あの人の手になりたい。

 手と、足と、目と、あの人を構成するあらゆるものに。


 胸が高鳴る度にいつも思う。





 日の遅い朝は寒い。
 ひっそりした朝の静けさの中、廊下に響いた陽気な声に、アルミンは笑いながら振り向いた。
「ディーター」
「おはようございます!」
「おはよう」
 朝から元気の良い事だ。年若い青年がアルミンと隣に並ぶのを待ってから、二人はつれたって歩き出した。
 日焼けをした浅黒い肌に、快活な笑顔で周囲に陽気を振りまく彼は、一応アルミンの部下と言う立ち位置にいる兵士である。共に特定の班には所属せず、エルヴィン直轄を基本として働いている。一見、頭脳戦は不得意そうな見た目とは裏腹に、エルヴィンの部下に選ばれたとだけあって、ディーターはとても聡明な青年である。そんな彼らでは
「早いね、ディーター」
「昨日、晩飯食った後すぐ爆睡しちゃったんですよね。目が覚めたのはさっきです」
「そう」
 笑う彼に眠たげな様子は無い。
 食堂に朝食の匂いが漂い始めるまで、まだ数時間ある。窓の外の景色すら、うっすらと紫がかった程度の明かりの中、アルミンはディーターに同行を願った。
「じゃあディーター、付き合ってくれる?あの人ってば結局、また二時間くらいしか寝てないんだ」
 アルミンが大きくため息をつきつつそう言うと、「うわ、」とディーターはその端正な顔をくしゃりと歪めた。
「マジですか。また?アルミンさんも一緒に?」
「僕が付き合わなきゃ、いつまでたってもやるからね。このまま朝食に向かわれて、食べた後に気持ち悪い吐かれてもと困るから、一度寝ていただきたいんだ。だから」
「お茶淹れてくりゃいんですね、了解しました」
 トン、と軽く右拳を心臓にあてたディーターに、「理解が早くて助かる」とアルミンは笑った。
「リラックスする物を頼むよ。間違っても、目が覚めてしまうようなのは」
「承知してます。すぐにお持ちしますか?」
「そうしてくれ」
 分かれ道で足を止め、アルミンは食堂へと足を向けるディーターを呼び止めた。
「そうだ、僕の分も頼んでいいかな」
「はい。紅茶でいいですか?他には?」
「うーん、睡眠薬」
 ディーターはにやりと笑った。
「一服盛るんですか?」
「ぜひともしたい所だよ。奥の手だけどね」
「楽しみにしてます」
 いたずらっ子のように笑う彼を尻目に、アルミンは執務室へと向かった。


 幅が少し広めにとられた廊下の先にある部屋は、扉もやや重厚に作られている。慣れた様子でノックを数回すると、アルミンは返事も待たずに入室した。
「失礼します、団長」
 真向かいの壁は一面が大きな窓で覆われていた。
 それを背にした執務机で頬杖をつく女性にため息を落とし、アルミンはカツカツと音を鳴らしながら近づく。彼女の視線が落とされている机を書類の束で軽き、注意を促す。やや間を置いて、ぱちり、ぱちりとゆっくり瞬きをした後、ようやく彼女は顔を上げた。
「……やあ、アルミン」
 にこり、と人好きのする笑顔を浮かべて挨拶をするも、アルミンは素っ気なく、ため息を一つ落とすだけにとどめた。
「全然進んでないじゃないですか。非効率ですから、これ以上は無駄では?」
「まとまらない時にこそ浮かぶ思考はあるものだよ」
「またそう仰って」
 再びにこり、といっそ胡散臭い程のまぶしい笑顔を向けられ、アルミンは肩をすくめた。
「そろそろお休みになってください。朝食まであと三時間程ありますから、仮眠を取られては?」
「けどまだ、この書類が残っていてね」
「一時間前に始めた書類がまだ終わってないんですから、もう今更粘ったところで無理でしょう。今ディーターをお茶を淹れにやっていますから…」
 ゴンゴン、とブーツのヒールがドアの下部を蹴る鈍い音が響いた。アルミンが素早くドアを開け、トレイを抱えたディーターを迎え入れる。お茶にしましょう、とアルミンが強い口調でエルヴィンに進言すると、彼女はようやく手の中のペンを机に放った。すっかり丸まった背中をのばしながら椅子にもたれる。長い指が髪留めにかかり、ゆっくりと引き抜く。すると、きっちりと結われていた髪は痕も残さず、さらりと彼女の肩を滑り落ちた。髪を数度かきあげ、けだるそうにため息をつく。ディーターからカップを受け取ったアルミンがそれを手渡すと、エルヴィンは小さなそれからぬくもりを求めるかのように、椅子の上で縮こまった。
「……いい香りだ」
「ハーブティーにしてみました。団長は、香りの強いものの方が…」
「好きだよ。けれど今朝はこれでちょうど良かった。ありがとう、ディーター」
「いえ、団長のお口に合うなら幸いです」
 朝の柔和な雰囲気に絆されたのか、ディーターはいくらかリラックスしたように軽く敬礼を見せた。
 小ぶりなカップ一杯分のお茶を飲みきったあたりで、そのほのかな暖かさに弛緩したのか、エルヴィンはとろりとその怜悧な青を緩ませた。
「……ああ、眠くなってきたかもな」
「いい事です。着替えをお持ちますか?」
「いや、いい…このままで……朝食前に着替えるよ」
 ディーターがカップを片付け部屋を出て行くのと同時に、アルミンが仮眠室へつながるドアを開ける。仮眠用の部屋ではあるが、ワーカホリックのエルヴィンが中々自室に戻って休まないがために、中々に上等なベッドが置かれている。日焼けを避ける位置に据えられた大きな本棚には、執務室に収まりきらない量の蔵書が溢れ帰っていて、既に仮眠室とは名だけの、エルヴィンの寝室とほぼ化している。
 ベッドに腰掛け、ループタイを左手で引き抜くエルヴィンの膝元に跪き、真っ黒なブーツに手をかける。両足から抜き取ると、アルミンはそのまま腰のベルトに手をかけ、足のベルトを緩めた。
「アルミン、」
 エルヴィンの声に顔をあげ、差し出されたループタイを受け取る。ベッドサイドに置かれたベルベットの箱にそれをおさめると、アルミンはベッドに横たわるエルヴィンの腹までシーツをかけた。
「アルミン」
「はい、エルヴィン団長」
「袖を振ってくれ」
 右ひじが痒いんだ。目を伏せそう告げるエルヴィンの顔に色濃い疲労が見て取れて、アルミンは頷いた。
「…はい」
 アルミンはあらぬ方向へと投げ出されたエルヴィンの右袖を手に取り、ぷらぷらと左右に振る。エルヴィンはうっすらと開いた目でその様子を見た。
「どうですか?」
「収まってきたような、……気はする」
「掻きましょうか」
「う…ん、そうだな、いや、さすってもらっても?」
「もちろんです」
 アルミンは右袖の肘の部分の布を両手で包むと、上に重ねた手を前後に行き来させるようにしてこすった。シュッ、シュッと布擦れの音が静かな部屋に響く。左手で顔を覆ったエルヴィンはやがて、ああ、と重くため息をついた。
「収まった。ありがとう、アルミン……世話をかけるな」
「どうぞ、お気になさらないでください」
 アルミンはそっと袖をエルヴィンの横に置くと、何も生えていない右肩をそっと包んだ。先程までこすり合わせていた両手は暖かく、肩に伝わる熱にエルヴィンはほう、と息をついた。
「今朝は至れり尽くせりだな」
 かすかに笑って言うエルヴィンに、アルミンは困ります、とあきれ顔で返した。
「不摂生をすればこうして美味しい思いができると理解されては。夜はきちんと寝てください。あなたが倒れたらどうするんです」
「ハンジがいるさ」
「ご冗談を」
「冗談ではない」
「そういう意味ではありません」
「ううん、厳しいな」
「当たり前です」
「君もしたたかになったものだ」
 なんて事の無い会話をかわしながら、アルミンは圧をかけるようにゆっくりと、右肩に触れた手に力を込め、ゆるめるのを繰り替えした。とうとうその重いまぶたを閉じきったエルヴィンの口が、わずかに弧を描く。

「……気持ちがいいよ、アルミン」


 ーーー目眩がする。

 告げられた言葉の甘美な響きに、アルミンは酔いしれそうになった。ぐらりと重心が傾きそうになるのをぐっとこらえて、右肩に触れた手をそっと外した。
 すう、と聴こえ始めた静かな寝息に、アルミンは鋭く耳を澄ませて、そしてゆっくりと、床の軋みにすら注意を払って、両足で跪いた。額をベッドのシーツにつける。エルヴィンの香りと、単調な寝息がかすかに感じ取れて、年甲斐もなく顔が赤く染まる。祈るような気持ちで両手を合わせて、アルミンは目の前で眠りにつく主に衝動のような想いを馳せた。

 信仰に近い敬愛から、情欲すら伴った親愛への変化は、とても緩やかなものだったと、アルミンは思う。想いの自覚はとても後になってから来たし、想いに名前を付ける事にすら、とてつもない時間を要した。それはアルミンの葛藤が、如実に現れた時間だった。当時、自分でも自覚的であったエルヴィンへの敬愛は、信仰心と言っても差し支えない程度にまで達していて、彼はエルヴィンをどこか神格じみた、崇拝対象へと昇華させていたのだ。何かを変えるために人の心を押しとどめた、限りなく人間に近い、神のような存在。だからこそ認めたくなかったのだと今は思う。情欲を伴った瞬間、エルヴィンはもはやアルミンにとって偶像崇拝のような対象ではない。手を伸ばし、暴きたいと望んでしまう、女となった。もちろん、敬愛を愛情と取り違える事例も少なくない、兵団という特殊な環境に身を置いている以上、愛情の履き違えという可能性も考慮したが、すぐにかぶりを振った。
 ーーー勘違いで済ませられる程度の想いでは、とうの昔に無くなっていた。

 勘違いを疑った。あってはならないと自己を責めた。けれど兆しは初期の頃に既に芽生えていただろうという事も、アルミンにはわかっていた。彼はエルヴィンにすべてを授けられたのだ。兵団の雑事の廻し方一つから、パトロンとの交渉毎、果てには女を屈服させる事に至るまで、彼はすべてをエルヴィンに仕込まれたのだ。あの幼くも成熟な十五の歳に、彼はエルヴィンに身体をゆだねた。エルヴィンは肉欲でもってアルミンを屈服させた。性差という、時として金と同じくらいに陰謀がうごめきやすい分野からアルミンに施したのだ。エルヴィンは、義務からそれを行ったのかもしれないけれど。



 十五のあの時より、エルヴィンは香水を身につけるようになった。香水と体臭の混ざり合った、エルヴィンの香り。それがシーツから漂ってくる。アルミンは重たくなった腰に顔を赤くして、そろそろと股間に手を伸ばし、そして逡巡して、立ち上がった。音を立てず、足早に部屋を後にする。閉じた扉に背中を預けて、アルミンはずるずるとその場に座り込んだ。エルヴィンの右肩をしきりになでた手を顔に押し付ける。静かに、静かに、息を吸った。

 惨めだと思った。
 惨めで、浅ましくて、いやらしくて、苦しい。

 ーーーくるしい。




 一度だけ、戯言のように、想いを吐露したことがある。

 左利きになって、筆跡が変わってしまった。ペンの持ち方すら変わってしまった。書く時にインクが擦れるから、浮くようにして持つ持つようになった。右下がりの繊細な字になった。前線から退いて削られていく肉も、少しずつ増えていく目尻の皺も美しいと感じた。アルミンにすべてを教えて、そして自分にはもう何も無いだろうと自分の魅力の枯渇を笑う姿も。すべて、何一つを取ったって、アルミンが幻滅するものなど無いのに、彼は彼女の一挙一動に胸を高鳴らせるのに、彼女は自分にはもう何もないといって笑うのだ。
「ふふ」
 笑うエルヴィンに、アルミンは苛立ちまじりに本気を訴えた。それすらも彼女は、かんしゃくを起こす子供をなだめる母親のように、苦笑と共に流した。
「正直こんな年増のどこがいいのか、理解しかねるよ」
 ーーー好きだ。

 
 好きだ、好きだ、好きだ、好きだ。
 くるおしいくらい、あなたが好きだ。


 そう言えたらどれだけ良かっただろう。
 アルミンには、彼女とどうこうなりたいなんて欲はないのに。


『君の心臓はどこにある?』
 あの夜、指で顎を持ち上げられて、アルミンはまっすぐエルヴィンを見上げた。自分のよりもよほど薄いアイスブルーの瞳が、冷たく見下ろしてきて、ゾクゾクと背筋が震えたのを覚えている。左胸にあてられた手を搦め捕って、指先にそっと口をつけた。そして想いのまま、彼は告白した。
『僕は貴方の手足になりたい』

『背も、身体も、頭脳も、すべて貴女ののお役に立てるよう努力します。人類のために尽力する貴女に奉仕する為に僕のこれからの人生はあります。何も望みません、見返りもいりません。貴女の様な指導者に出会えた事が、僕が兵士になって得た一番の幸せです、だからーーーですから』



僕はあなたを望まない
おねショタからの成長したショタおね、大好きです。

2014年7月6日