『すまぁぁぁぁぁああああんん!!!!』
べちーんと真っ白なロールケーキが床をたたいた音がする。
モニター越しの父はたった今ルルーシュに向かって土下座をしていた。
それをよこであらあらと頬に手をあてながら見ているのは、シャルルの妻であり、
ルルーシュとナナリーの最愛の母であるマリアンヌだ。
シャルルが土下座をしたままぷるぷると振るえるのを見ながら、ルルーシュは深いため息をついた。
その音にモニター越しでも大げさなぐらいシャルルの身体がビクッ!と震えた。
疲れる。
「ルルーシュ・・・そろそろ許してやったらどうだ?ほら、シャルルもこんなにまぁ・・・その、こんなんだし」
「だめだ」
モニターを見たC.C.が少し引き気味に言うが、即座にそれを切り捨てる。
こんな土下座ひとつで許されるならば警察も軍もテロリストもいやしない。
『ルゥルゥゥウシュ!!!ただのぉ、できごぉころだぁったのだぁ』
「じゃあ死んでください」
『ルゥルゥゥウシュ!!!!!』
『こーら、だめよルルーシュ。死ねだなんて、そんなポンポンというものではないわ』
「ごめんなさい、母様。でも俺はどうしても父上だけは許せそうにありません」
そのやりとりを見ていたC.C.がとなりでそっと息をついたのが横目に気づいた。
それもそうだろう。
まさか日本独立のために動いている黒の騎士団の総帥ゼロの正体がいまだに皇位継承権を持った皇子で、
しかもブリタニアに反逆している理由が父親との親子喧嘩のためだなんていえやしない。
言い返すことばもございませんとばかりに頭を下げたまま動かないシャルルの代わりに、マリアンヌが口を開く。
『あのね、ルルーシュ。確かにこの人のしたことはとってもオロカでバカだったと思うわ。
でもね、ルル。この人がとんでもない意地っ張りで照れ屋でテンパるととんでもない威張りっこになるの、
あなたも昔から知ってるでしょう?ツンデレなの』
しっている。確かにしっている!けれども!!
『あの日ルルは私が死んだと思ったのよね?
無理もないわ、意識がない私を見てびっくりしちゃうから面会も許されなかったんだもの。』
そう。確かにあの日、自分は母が死んだと思っていた。
そして面会ひとつも許されてはいなかった。
母のこともナナリーの見舞いひとつにも現れなかったシャルルは、母の見舞いには毎日やってきていた。
ただルルーシュがしらなかっただけなのだ。
『この人ったら、あなたが初めて自らの意思で謁見の間まであいにきてくれたからはしゃいじゃって、
髪のカールにいつも以上に時間をかけたのよ?でも知ってのとおり、テンパると威張りっこになっちゃうから、
ルルーシュに会った瞬間に嬉しさでパニックになっちゃって、』
「それで実の息子に『死んでいる』とか『最初から生きていない』とか『愚かしい』とか言うんですか!?
割と好きだった父親にそんなこと言われた当時の俺の心境がわかりますか!?
こんな父親にこんなこと言われたぐらいでショックを受けたことがいまやもう屈辱ですけど、あの時俺泣いたんです!
ないたんです!号泣したんです!!」
『すまぁああああああああああああんんん!!!』
あ、涙声だ。byC.C.
『後悔ぃしておるぅううう。日本にぃ送ったぁこぉともわるかったぁとおもっておるぅうううう。
そしぃてぇ日本にぃせんそぉうを仕掛けぇたこともぉう!!』
「っ・・・・その宣戦布告をした理由が『俺と仲良くなっていく日本人がむかついたから』ってなんなんですか!
どんだけ日本人が亡くなったとおもってんですか!!
あの時俺とナナリーが本気で捨てられたと絶望したのがわかりますか!!
ブリタニアに見つかってまた政治の道具にされたり飼い殺しにされたり殺されたりしないために必死で隠れてた
俺たちの気持ちがわかりますか!!
そんでもって半年前初めてアンタの本当の気持ち知ったときの俺の驚愕がアンタにわかるってんですか
この絶倫ロールケーキ頭!!!」
『ぜつっ・・・!!』
「子ども百人近くいて絶倫じゃないわけないでしょうこの早漏!!」
『そうっ・・・!!!!!』
『あらあらまあまあ』
「俺に許して欲しければ頭丸めてパンツ一丁で腹踊りしながら
『私は世界史史上一番の阿呆です』と背中に書いてすべてのエリアを開放して俺に土下座しろこのくそ爺!」
『わかりましたぁあああああああ!!』
『やだ、私アナタのその髪型結構好きなのに!』
拝啓クソ親父様