暴走ホリデー
「ナナリー!可愛いよ、とっても。俺はこんなに可愛い女の子を見たことがない。可愛い可愛い、俺のナナリー!
お前なら何でも着こなせると俺は知っていた、ああ知っていたとも!」
「うふふ、まあお兄様ったら。でも、そういうお兄様こそ、とっても素敵な藤色です。さすがお兄様ですわ」
「そんな、ナナリー!お前のそのクリーム色に映える・・・」
ルルーシュ、ナナリー。そろそろやめようよ・・・。そう思いながらスザクはまた一つみかんをむいた。
さっきからやることがなくて、スザクはシルヴェスターコンサートの生中継を見ながらひたすらみかんをむき、
そして食べ続けた。紅白はルルーシュの却下で見ないことになった。
去年だったか一昨年だったかの低俗なパフォーマンスですっかり紅白への信頼を失ったルルーシュは、
ナナリーには絶対に紅白を見せないようにしている。
その代わりにナナリーの着る物に徹底するようになった。
(これまでも異常なまでに徹底していたが、それまで以上に。)
可愛い可愛いナナリー。いつものかっこつけた「ルルーシュ・ランペルージ」はどこへやら、
ルルーシュはまるで女神でも見たように手で顔を覆ってナナリーを仰ぎ見ている。
(事実、ルルーシュにとってナナリーは神にも等しい。)
そんなナナリーも、今年の夏やっと目が見えるようになって、それまで以上にルルーシュにべったり甘えるようになった。
いまだって男物の着物を着こなしているルルーシュを見て頬をそめ、うっとりと目をとろけさせている。
(ほんと、僕がいる意味ないんじゃないの・・・)
そう思ったスザクは、またちらりと二人を見た。
ルルーシュはナナリーの着物に合うように、その車椅子の生地でさえ和装にしたのだ。
たしかに可愛いし、素敵だと思うけれど、やりすぎじゃないか。
また一つため息をつくと、チャイムがなった。お互いを褒め称えるのに夢中で、兄妹は気づかない。
仕方なしにスザクがドアを開けると、立っていたのはルルーシュの婚約者(なのか許婚)のC.C.だった。
その後ろにはルルーシュの元許婚のミレイ、
その隣には以前イベントで強制的にではあるが彼女だったシャーリーが立っている。
ああそういえば生徒会+αも来るっけ、と思い出したスザクは、暖かい笑顔で三人を迎えた。
シャーリーによると、ニーナとカレンは後でくるらしい。
ちなみにリヴァルはとっくにきているが、現在ルルーシュの命令でおせちの材料を買出しに追い出されている。
C.C.の存在を視認するなり、ルルーシュは嬉しそうにいそいそと押入れからC.C.の着物を出し始めた。
どうやらナナリーの着付けで目覚めたのか燃えたのか、C.C.に着物を着せる気でいるらしい。
どうやらそれをC.C.もわかったのか、肩をすくめて服を豪快に脱ぎ始めた。シャーリーがびっくりしている。
「C.C.、C.C.、これを着ろ!」
「はいはい」
「ていうかルルちゃーん、女の子が目の前で脱いでるのになんとも思わないわけ?」
「会長も着物着ますか?」
「きるー!」
「ちょ、会長!身を翻すの早すぎです!」
もうルルーシュの暴走に、スザクは口も手も出さないと心に決めた。
クラシックなんて好みじゃないから、携帯を取り出してイヤホンつけて、ワンセグで紅白を見ることにする。
リヴァル、早く帰ってきて。
すっかりパンツ以外の衣類を全部脱ぎ去ったC.C.を見たルルーシュは、
C.C.が寒さを感じる前に肌襦袢をぱぱっと着せて、帯を締めてクルクルとまわした。
こいつ本当に男か?
なんてミレイもシャーリーも、ついでにほんの数秒前ついたカレンもニーナも思ったが、本人達は全く気づいていない。
それどころかナナリーでさえ、二人を見て「まぁ、C.C.さんがどんどん、いつも以上に綺麗になっていきます」
なんていうものだから、果たして裸になるのは普通なのか普通じゃないのかわからなくなってしまった。
やっと帰ってきたリヴァルの視線を含めた五人の視線による問いかけに、
スザクは紅白を見ながらひらひらと手を振って無視を決め込む。
「ああそうだルルーシュ、マリアンヌが今から来るそうだぞ。アイツの着物もあるんだろう?」
「母さんが・・!?あああるとも、あるともさ!俺はなんて幸せ者なんだ、母さんとナナリーの着物姿を見れるなんて!
父上に写真を見せてやらない!」
「見せないのか」
「見せないともさ」
リヴァルからの荷物を受け取り、全てパックから出すようにミレイに伝えたルルーシュは、
るんるんとスキップしながら押入れに向かう。
マリアンヌに似合うような濃紺とも深い青とも取れる色合いの着物を出してきた。
「ほうらナナリー、綺麗だろう!母さんにこの着物、似合うと思わないか!」
「本当ですわ、お兄様!さすがです!素敵です!愛しています、お兄様!」
「俺も愛しているともナナリー!ああC.C.、綺麗だろう?素敵だろう!」
「ああそうだなさすがだ綺麗だなもちろん素敵だ。それよりもお前、なんでそんなにテンション高いんだ」
すでに生徒会組みはスザクと一緒にワンセグで紅白を見ている。
ニーナだけは素直にシルヴェスターを見ているが、シャーリーは紅白を見つつちらちらと今日のルル、
変わってて素敵だなぁと思っている。
今日もルルーシュは来たる新年のために、御節を作って御雑煮を作って、
大好きな人たちを嬉々として着付けて、仲間達に囲まれて新年を迎えるのだ。