The Irony of Romeo and Juliet
0. cry out love
たとえば、いたずらに頬を撫でるその指だとか、愛を湛えたときのその甘い瞳だとか、鳥の濡羽色に隠れる白磁の項だとか。
カレンをみて笑う唇だとか、高貴なまでの足の払い方だとか、痩躯の中に併せ持った女性特有の柔らかさだとか、
気付けば彼女の表情、しぐさ、視線一つ一つに釘付けになっている自分が居た。
「好きだな・・・」
カレンを笑い、からかい、神経を逆撫でする彼女の言葉が気に入らないというのに、嫌いだというのに。
全てを包む真の慈愛を持ちながら、世界の最果てから眺めているような態度を嫌悪しているというのに。
なのに彼女はそれすらを瞬間的に忘れさせる程に、目を離すことを許さない程に美しく、高貴であり、
全てにカレンは惹かれていた。
カレンの胸を焦がす想いは、いつしか無意識に名前を呟き、
気付かずぽつりと想いを口にするほどにまでに至っていた。
ブリタニア人の彼女に恋をしていた。