The Irony of Romeo and Juliet
1. forgive me giving xoxo



悲痛な嗤い声が耳から離れない。カレンが敬愛する、カレンの全て。その行動、その思想、その知能。 どれをとってもそれはカレンを魅了するもので、そしてカレンを鼓舞し、奮い立たせ、勝利に導く存在だった。
そんな彼が、無頼の中で悲痛な嗤いを響かせている。 狂乱にも似たそれは、カレンにとって彼の平常を危惧するよりも身の心配をさせる物だった。 ゼロが狂った、ある男が言った。 その言葉を聞いた瞬間、いつも減らず口ばかり叩くその男を殴り、狂ってなんかいないとカレンは叫んだ。

無頼から降りてこない彼を思い、カレンは思い切って機体に乗り上げた。 大丈夫ですか、ゼロ。どうしたんですか、ゼロ。ゼロ、貴方は俺が守ります。 かけたい言葉はそれこそ星の数ほどあったけれど、言の葉はカレンの喉に引っ付いたまま出てこようとしない。 しばらくした開いたコックピットを覗き込めば、そこには何時もと同じゼロが居た。 それに安堵すると同時に、では先程のはなんだったのかと心配になる。

すみません、ゼロ。
信頼を失うのを覚悟で、紅蓮を取り上げられるのを覚悟で、 騎士団を追われる覚悟で、殺される覚悟で、カレンはゼロの前に降り立った。仮面を掴む。 一瞬のことで反応すら出来なかったゼロに、心の中で心底謝って、カレンは両手でそっとはずした。 そして驚愕に瞳を染める。

そこにいたのは、カレンが恋した彼女だった。

瞳を濡らし、頬には幾多の痛恨の跡が残っている。 突如の出来事に固まり、カレンを凝視する彼女の中に、一体どれほどの悲哀が満ちているのだろう。 電撃が頭を貫き、カレンは一瞬だけ意識を飛ばした。 現実に戻ってきた思考はわずかに混乱しており、けれど愛しさだけは募り続ける。
「ルルーシュ・・・・」
瞬間に、全てを理解する。 彼女の言葉、行動、そして自分が届くはず無いと思っていた、そう思わせていた、彼女の一途な恋心。 それらが全て壊されてゆく。彼女が一人になってゆく。男への憎悪がカレンの拳を握り締め、彼女への恋情が心を染める。 涙が頬を伝うのを自覚しながらも、カレンは何も考えずにただ彼女の痩躯を掻き抱いた。
「ルルーシュ、ルルーシュ、ルル、ルルーシュ」
「・・・カレン、・・・・」
強張る体を一層強く、けれど優しく抱きしめる。愛している。愛しい。愛しい。 カレンの高めの体温故か、ほうっと息を吐き出したルルーシュの瞳から、 流すことだけはしまいと虚勢を張っていた悲劇が流れる。


「貴女は俺が守ります。」


涙に濡れた瞳で真摯に囁いた。愛に気付いたルルーシュが泣き崩れる。 華奢をしっかりと抱きとめて、カレンは心の中で呟いた。愛しています。



あの男は、俺が殺します

2009年4月4日