The Irony of Romeo and Juliet
04. gimme a kiss, gimme a hug




「妹がね、いたんだ。ナナリーって言って」
カレンの肩に顔を埋め、ルルーシュは愛しそうに懐かしんだ。 彼女の短い黒髪は先程から継続的に共犯者だというC.C.に掬っては落とされ、撫で付けられている。
「俺とは違って、母さんの運動神経を全部受け継いでしまったような子で。 無邪気で純粋ででも可愛くて、 ちょっと生意気なところもあって時々傍若無人なところも見せたけれど全部全部が可愛くって、 お姉様、っておねだりされても全然迷惑じゃなかった。 でも本気で叱るとちゃんとそれを受け入れる素直さも持ってて、他の人を気遣ったり、痛みをきちんと理解できる子だった。 教えられなくても、ひとりよがりなことなんてしたことなかった」
「太陽のように、花のように笑うこで、俺はいつもあの子の笑顔に救われてた。 お姉様、って呼ばれて笑顔を見るたびに、いつもぽかぽかしてあったかくて、 髪を結ってとねだるあの子の髪はいつも俺が好きなように結わいてた。 可愛いものが大好きで、ふりふりのドレスだって好きで、でもとげとげしいピンクよりもパステルみたいな、 薄い緑とか黄色だとか、優しい色が好きな優しい優しい女の子だった。」
「でも足が動かなくなって、目だって閉ざしてしまって。 あの子の母さんゆずりの紫がかった蒼色の瞳が見れなくなったのはすごく悲しかったけど、 でもそれ以上にそれがあの子の自分を守る術だったのが悲しかった。俺にあたりちらしても良かったのに。 なんでお姉様だけが無傷なんだって、詰ってくれてよかったのに、少しもそれをしなかった。優しいこだよ。 優しくて愛しい、可愛い可愛いわたしのナナリー。 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの最愛の妹、ナナリー・ヴィ・ブリタニア。」
「笑わなくなったあのこを、無自覚に周りを破壊するあのこを、どうにかしなきゃと思ってた。 でもそれをするのが『わたし』だと、あのこはもっと『わたしに』依存する。お姉様がいないと生きていけなくなる。 それがこわくて俺は、どうすればいいかわからなかった。それを直したのがスザクだった。 強引だったけれどナナリーの心を押し開いて、ナナリーは次第にものを壊すのをやめていった。 段々笑顔がこぼれていった。嬉しかった。 感謝してもしきれなかった。好きだった。大好きだった。愛してた、スザク」
「けどナナリーは死んでしまった。 亡骸は日本人にめちゃくちゃにされる前にアッシュフォードが引き取ってあって、 実は学園の華の庭園にある慈愛の女神像は、ナナリーだったりして。 お墓は迫害されないように、ミレイの自宅の裏にあるんだ。 ほんとは母さんと同じところに眠らせてあげたかったけど・・・でも無理だった。 でも俺がいつかあそこに行くんだ。俺が埋まるのは、ナナリーの隣。 甘えんぼでいつだって寂しがりやだったナナリーだから、俺が傍に居てあげなきゃ」
「スザク、好きだったけど、大好きだったけど、愛してたけど、でも所詮それはわたしの独りよがりで、 スザクは別に俺のことなんてなんとも思ってなかったんだ。 スザクに助けてほしかったけど、傍に居てほしかったけど、でもそれも独りよがりだから、もう求めない。 スザクが暗殺したわけじゃなくて、 まだ時期が早すぎてゼロの登場するにはまだまだ騎士団だってそろってなかったけど、でも好きだったから、 大好きだったから、愛してたから、だから助けたけど、でもそれも独りよがりだったみたい。 もう疲れちゃった。俺はもういい。C.C.とカレンが傍に居てくれたら、それで幸せ。これも独りよがり?」

「「まさか!」」



ナオト兄さん。兄さんも、こんな感じだった?

2009年4月4日