The Irony of Romeo and Juliet
5. Randezvous



次の日、カレンの態度と言葉に酷く憤りを覚えたスザクは、ルルーシュにカレンを近づけてはならないと意気込み、 お昼休みを含んだたった二時間だったけれど学園にやってきた。 ルルーシュと昼食を食べようと思ってクラスに足を踏み入れたけれど、 そこにいたのはいざ生徒会室に行こうとしているリヴァルとシャーリー、そしてニーナだけで、二人の姿は居なかった。 そのことに絶望を覚え、リヴァルたちの制止の声も聞こえず走り出す。 息が上がり始めるほどに学園中を駆け回り、 学園の東側にある通称『華の庭園』といわれる中庭にたどり着いたところで二人を見つけた。

ルルーシュとカレンは二人そろって、庭園の中心に建っている慈愛の女神像に背を預けて座り込んでいた。 像の周り、至る所に咲いている野花を摘み、楽しそうにルルーシュが一つ一つ編んで行く。 それは七年前、ルルーシュがナナリーと良くやっていたもので、 出来上がった花冠はいつだってスザクとナナリーの頭を飾っていた。 その頃と同じように、楽しそうに、嬉しそうにルルーシュは手を動かす。 その無邪気な表情は七年前を錯覚させて、 スザクを一瞬幸福に浸らせたと同時に隣の男の存在によって地獄へと突き落とした。
カレンの隣には、二人分のランチボックスが置かれている。 何をするでもなく、ただルルーシュを見守っているカレンは、出来た、 と花冠を掲げるルルーシュに屈託の無い笑顔を見せた。 カレンにやるよ、とルルーシュがいたずらにカレンを捕まえ、そしてそっと冠を頭に乗せる。 恥ずかしがり、最後の最後まで嫌がったスザクとは違い、 嬉しそうに甘受したカレンは文句無く淡い白と黄色の花が似合っていた。
ありがとう、と幸せそうに笑ったカレンが、もう出来上がっていた小さめの花冠を手に取る。 それをゆっくりとルルーシュの右手首に巻きつけて、カレンは微笑んだ。
「これは、俺だけの姫君に」
丁寧に飾られた手を取り、そっと指先に口付ける。 くすぐったそうに笑ったルルーシュは、嬉しそうにカレン、と呼んだ。

ぐるぐるとスザクの破壊衝動が滾る。けれどそれを出さないのはひとえにルルーシュが居るからだ。 ルルーシュさえいなければ、病弱なカレンなど殺して見せるのに。
スザクが何時もしたいと思っていた手の甲へのキス、指先へのキスは、 今や自分の主となったユーフェミアにしか許されていない。 好きといえるのも、愛を囁けるのも、ユーフェミアにだけ。 それがなんとももどかしくて、何度も騎士を辞めたいと思ったけれど、 ゼロが出るたびにやはりユーフェミアは最上の主だと思いとどまる。

ルルーシュ、君が為に騎士になったのに。
ルルーシュ、君の為にゼロを殺すのに。



認めてやるさ。俺だけの姫君といえるカレンが、羨ましい

2009年4月5日