The Irony of Romeo and Juliet
6. delete your little princess



その後、幾度と無くスザクは戦場でゼロに会った。
スザクの相手をするのはいつだって赤い機体だったけれど、会う度に、戦うたびに、 ゼロの騎士はスザクへの攻撃を強めていく。スザクの攻撃が弱まっていく。 けれどそれはスザクが力を出せていないからではなく、スザクが力を出しても敵わないことから来る必然だった。
それでもスザクは説得をやめようとはせず、それはゼロにガウェインを奪取された時から苛烈を極めた。 そして紅の騎士への呪いの言葉が、発せられるようになった。
まさかカレンが、黒の騎士団員だったなんて。 神根島でカレンを見つけ、騎士団員であることが判明し、捕らえようと試みたけれど失敗した。 けれどスザクはカレンを探し続け、夜に見た光をたどっていくとゼロとカレン、そしてユーフェミアを見つけた。 カレンに攻撃しようと構えたけれど、それもユーフェミアの米神に銃を突きつけられてはどうにもできない。 頭の後ろに銃口を突きつけ、ユーフェミアを歩かせるカレンを、どれほど殺そうと思ったことか。 ユーフェミアが中心に歩いていったところで離れたのを見て、 カレンとゼロ共々捕らえようと地を蹴ったけれど、それはすぐに地面が崩壊することで失敗に終わった。

ゼロがスザクを勧誘することはなくなっていた。


団員であるカレンが、ルルーシュの傍に居る資格は無い。 ずっとそう諭し続けてきたけれど、カレンは黙って聞いているだけで、反論も頷きもしない。 ゼロを呪うたび、カレンを殺すたび、ルルーシュとの未来への愛と希望が募っていくのに。
なのにルルーシュは輝き続けるけれど、その輝きがスザクを見るたびに減っていく。
カレンが傍に行くと途端に放ち始める輝きに、なんで、どうして、そいつはと数え切れないほど絶望した。

「ルルーシュ、落ち着いて聞いて?」
「何だ、スザク」
「カレンは黒の騎士団員なんだ」
カレンから引き離す唯一の方法だと思った。これでルルーシュが絶望してくれれば。僕に傾倒してくれれば。
「だから?」
一瞬の幸福に満ち、けれど次の瞬間それも無くなる。 平然としたルルーシュの顔に面食らい、けれどスザクは根気良くルルーシュを説得しようと試みた。
「だから、カレンは騎士団員なんだから、お願いだから近づかないで。危ないでしょ? それにもしルルーシュが皇女だってことがばれたら」
「それが?」
道中で必死に頭の中で組み立てた、 ルルーシュにカレンを嫌悪させる方法は、けれど全てルルーシュ自身に遮られてしまう。 何でかわからなくて、どうすればいいかわからなくて、スザクは慌ててルルーシュの手を握った。 ルルーシュの肩が跳ねる。
「それが、って・・・ルルーシュ、わかってる!?黒の騎士団はテロリストなんだよ、ゼロは悪なんだ! クロヴィス殿下だって殺してるし、コーネリア総督もユフィの事だって狙ってる! アイツは間違ってるんだ!なのに君がカレンといたら・・っ」

「スザク」

冷涼なアルトの囁きに、瞬間スザクが凍りつく。 しっかりと握られていた手を離して、ルルーシュはスザクの視線をそらした。
「俺の話、聞いていたか?俺はゼロと騎士団肯定派だって、何度も言っただろ? カレンが騎士団員だったからって、歓迎こそしても嫌悪するなんてこと、ありえない」
椅子から立ち上がり、結局ルルーシュはスザクの淹れた紅茶に手をつけなかった。 終わった書類の束を両手で持ち、静かに生徒会室を後にする。ドアの外には、カレンがルルーシュを待っていた。

「俺も皇女だったから、わかるよ。騎士になってくれた者への愛情。ずっと傍にいて欲しい。自分を支えて欲しい。 愛して欲しい。認めて欲しい。肯定して欲しい。・・・騎士の気持ちも、知っている。 ずっと傍にいたい。自分が主を支えたい。愛している。主以外見えない。 主を否定するなんて、ありえない。ユーフェミア様も同じのはずだ。 ―――なんでユフィを放っておくんだ、スザク。ユフィを愛せよ」



敵だって、俺の妹だよ

2009年4月5日