The Irony of Romeo and Juliet
10. memento mori



「・・・殺してやる」

広い広い、子どもの頃だったなら憧れていただろう、豪奢な部屋。 コルクボードに貼り付けた、生徒会で映っている写真の一角―――枢木スザクの顔に、ナイフを突き立てた。

彼女は何処に衝撃を受けただろう。頭だろうか。ならば枢木スザクの脳天を突き刺してやろう。 ぽすん、と音を立てて枢木スザクの頭が跳ねた。けれど決して、隣に映るルルーシュには傷つけない。
彼女は何処に衝撃を受けただろう。一瞬麻痺したようだから、四肢だろうか。 ならば枢木スザクの手足を捥いで、痛みに悶え苦しませよう。ぐちり、と音を立てて枢木スザクの四肢が切断。 枢木スザクの右腕は、ルルーシュの肩にまわされていたけれど、ぎりぎりの所でルルーシュには傷一つ着いていない。

それとも、それとも。
心だろうか。胸だろうか。それなら、心臓をこのナイフで刺してやろう。 ぶちぶちと、枢木スザクの心臓の真上が刺されては抜かれ、刺されては抜かれる。

一通りそれを行った後、カレンは胸元からルルーシュの写真を取りだした。 そっと唇にキスを落として、それを仕舞う。昨日、騎士団満場一致で決定された、行政特区日本への参加拒否。 決まったときの、ルルーシュのほっとついた息遣いを、覚えている。 ユーフェミアの喜色に染まった顔を見て、恐怖に美貌を引き攣らせたのを、覚えている。 寝言でナナリー、クロヴィス兄さん、ナナリー、クロヴィス兄さん、かあさま。 しきりに呟いていたのを、覚えている。


「死を覚悟しろ、枢木スザク」


お前に夢が似合う物か。



汝は死を覚悟せよ

2009年4月16日