The Irony of Romeo and Juliet
15. Supercalifragilisticexpialidocious



紅茶を淹れて来るよ、かろうじてそれだけを行って、ルルーシュは耳鳴りのする頭を振りながら給湯室へ向かった。足はふらふらするし頭はいたいでさんざんだったが、どうにかドアにはたどり着いた。ルルーシュの手のひらに反応してしゅっとスライドしたドアに、これほどまでに感謝した事は無い。つまづくようにして部屋に入ると、ドアのしまる音と同時に足から崩れた。涙があふれる。

どうして。
どうしてどうしてスザク。スザク、なんで。なんでそんな事いうの。なんでそんな事言えるの。わたしの事もうどうだっていいの。あんなに守ってくれたのにスザク。うまく背負えないわたしのかわりにナナリーを背負ってくれたのに。いじめっ子から守ってくれたのに。わたしをまもるといってくれたのに。わたしがもうキレイじゃないから?髪が長くないから?お姫様じゃないから?ナナリーがいないから?わたしをわたしと言わないから?だからユフィを選んだのスザク。ずっとずっと好きだった。それこそいつだって想っていたのに。いつか日本の為にたつスザクと再会したかったのに。ブリタニアの為に日本人を殺すスザクと再会なんて。でもそれでもよかったんだよ。だって好きだった、スザク。好きで好きで好きで、好きだったのスザク。だから技術部なんて言葉も信じたの。進む道が違うと解っていながらでも好きでいる事は自分に許そうってきめてたの。でもスザクはユフィがいいんだ。ユフィとキスとか、きっとするんだ。ユフィのあのかわいいあの子の笑顔を毎日みて、そして毎日キスをして、そして昔わたしに言ったみたいに、髪が綺麗だとか、笑顔が可愛いとか、そういう事を言うんだ。でもそれでもよかった。だって好きだったから。でもスザク、そうなのね。あなたは笑顔で毒をはくのね。もうわたしの事、想う事すらしてくれないのね。そうやってさりげなく銃を撃つのね。わかったわスザク。わかったよスザク。スザク、お前はわたしを、・・・おれを。
おれを殺したいのか、スザク。

『もしもし!』
「・・・・カレンッ・・・・・・・!!」
早く早く来てほしい。カレン、カレン。カレン、わたしの、おれの騎士。カレン、カレン。カレン・・・!
『どうしたのルルーシュ、何があった!?』
「早く来て、カレン・・・ッ・・・助けて・・・・・』
『今行くから!今向かってるから、電話切らないでよルルーシュ!』
そうして走るカレンの息づかいと、繰り返される今行くからの言葉を聞き続けて約二分。シュンという音とともに暖かい腕に抱きしめられて、ルルーシュはようやく頬を濡らした。そうだ自分にはカレンがいるんだ。
「ここから、出たい・・・・」
カレンの腕に力がこもる。目の前のたくましい胸に顔をすりつけて、ルルーシュは懇願した。
「もう、いい。もういたくない。早く離れたい。もう、突きつけられたくない・・・・・・・・」



もう、スザクなんて、いらない。

2011年12月28日