ナイトオブセブン『枢木スザク』は、簡単に言ってしまえばそっけなかった。
愛想はないし、抵抗する敵には容赦しないし、
ラウンジに仲間で談笑していても一人がけソファでそ知らぬふりを決め込んでいる。
通常、ラウンズに入るにはまず皇族やナイトオブワンなどの推薦などがなければいけない。
もしくは何か偉大な功績を成し遂げたならば、その名誉を賞して与えられる場合もある。
だがなんにせよそういう場合は必ずその人物がラウンズに就任する前に前もってラウンズ全員に通達が行くものであるが、
半年前、いきなりナイトオブセブンを拝命した枢木スザクにおいて、その『通常』は行使されなかった。
任務から帰ってきたばかりであったラウンズや任務がくるのをラウンジでまっていたものなど、
集められるだけのメンバーを突然召集した皇帝は、
いきなりナイトオブセブンに名誉ブリタニア人―――日本人―――を就かせることを告げた。
異例中の異例中に誰もが驚く中、ひっそりと謁見の間の暗闇から姿を現した枢木スザクの目は、凍りついたように冷たく。
礼儀正しい最低限の自己紹介をした後、部屋にこもっていた。
そんなスザクを半ば無理矢理に部屋から引きずり出したのはナイトオブスリーであるジノ・ヴァインベルグと
ナイトオブシックスのアーニャ・アールストレイムである。
カチャリとドアが開けられた瞬間にグイと腕をつかまれたスザクは、瞬時に殺気を放ち、扉をしめようとした―――が。
ジノとアーニャに思わぬ援軍が現れたのだ。
ワンとしてラウンズをまとめなければならないビスマルク・ヴァインシュタインと、
あの『ブリタニアの魔女』として名高いコーネリアでさえ頭が上がらないというナイトオブナイン、
ノネット・エニアグラムである。
さすがにラウンズ四人がかりでやられては、スザクも勝てる自信がない。
何せナイトオブラウンズたちは皆スザクのような身体能力やKMF操作技術を持つつわものたちばかりなのである。
不利であることには変わりない。
そうしてまんまと談話室として使われている、ふかふかのソファやローテーブル、
最新式のモニターなどが完備されているラウンジに連れ込まれたスザクを待っていたのは、ち
ょうど任務明けで暇をもてあましていたトゥエルブのモニカと、テンのルキアーノであった。
シンプルだが側面に豪華な細工を施されている高級なローテーブルの上には、
暖かい紅茶の入ったポットと人数分のティーカップとソーサー、そして大きなお皿にあふれんばかりに盛られたクッキーが。
歓迎のお茶会だ!などと評したジノに便乗したラウンズたちは和気藹々と―――一人騒がしく―――カップを回し始める。
そんな心温かいラウンズたちの歓迎を受け、少しずつスザクは心を許していった―――と思う、とはジノの考えだ。
確かに、今では声をかければ気安く返事をしてくれるし、
肩に手を回して体重をかけても重いといわれるだけではらわれるようなことはない。
だがしかし、スザクには大きな闇が救っているように思えるのだ。
これはほかのメンバーの考えでもある。
なにか、大きなトラウマに取り付かれているような闇を垣間見ることもあれば、
時々何かをあがめるように何か―――ちらっと見たが、騎士証だった―――に口付け、上を向いているときもある。
そもそも、スザクのラウンズ入りの理由も聞かされていなかったため、わからないことは多い。
込み入った話をしようとするとさりげなく話題を変えるスザクをいぶかしんだのは当然だった。
I want my LOVE back
1.消えて亡くなった僕の太陽
その日スザクはラウンズに与えられた建物の中に位置する中庭にいた。
新たなエリアとなる国に戦争をしかけ、勝利を集めるために、
今回の任務にはジノ、アーニャ、ノネット、そしてスザクがつくことになっていた。
朝からいないスザクを呼びに行くために建物をでた四人は、中庭の所々に芸術的に張り巡らされている小川の一角に、
大理石のベンチに腰掛けているスザクを見つけた。
声をかけようと近づいたスザクは、ずっと空を見つめている。
今にもなきそうな雰囲気の彼に、一同は戸惑う。
ポツリと、彼の言葉が空間に木霊した。
「会いたいよ、ルルーシュ・・・」
それはひどく切ない声音だった。
「ちゃんと、ラウンズにはいった、んだ。お前の言うとおり、ちゃんと生きてる。がんばってるよ。
でも・・・。でも、お前がいないんだ。お前が俺のそばにいない」
それはラウンズが聞く、スザクの初めての本音だった。
スザクは以前のように騎士証に口付けて、また空を見た。
涙がとめどなくあふれている。
そのうち苦しそうに顔をゆがめ、縮こまるように体を丸めたスザクに声をかけられるものは、誰もいなかった。
「任務のない日はナナリーに会いに行ってる。お前と俺の宝物はぜったいぜったい守るから。
だから、帰ってこいよ、かえって、きて・・・、ルル、たのむから・・・」