変革は緩やかに。
そして確実に行われていく。 とても自由に、万人に愛されるだけの自由でもって、変革はたおやかに遂行されていった。



Mattare, piviere
1. a suo beneplacito 【自由な表現で】



エリア11の政庁は慌しくも緊張状態が保たれている。 太陽の光が差し込む窓を背にデスクの椅子に座ったコーネリアは、苛立たしげに爪を噛んだ。 そのそばでは騎士であるギルフォードがついており、彼の表情もまた硬い。 騎士であるスザクを伴って、総督に呼ばれるままコーネリアの部屋に入室したユーフェミアは、 姉の苦々しげな表情に驚きを見せた。
「お姉様・・・」
「総督だ、ユーフェミア副総督」
「は、はい。コーネリア総督」
慌てて言い直し、恥ずかしいのか下を向いた。 そんなユーフェミアをちらりと見、そしてその後ろで控えているスザクをにらんだコーネリアが席を経つ。 カツカツとヒールの軽快な音を立てながらデスクを回ったコーネリアは、そのままデスクに腰掛けた。 手首を返す。 恭しげにギルフォードが手渡した書類にざっと目を通し、そしてそれをダールトンに手渡した。 受け取ったダールトンもまた目を通し、そして目を伏せた。
「そういえば、もうそろそろ監査期間でしたか・・・」
「二日前にエリア10の監査を終えたそうだ。来週の初めにはこちらに到着する」
「あの、監査期間、とは・・・?」
ぽかんとした様子で聞いたユーフェミアに、隣にいたダールトンが書類を手渡す。 ゆっくり読まないと内容を理解できないユーフェミアに、ダールトンが横から指摘を入れた。
「二年に一度、皇帝陛下直属機関が行う各エリアの監査のことです。 エリア1から順に行われ、監査を終えた後に枢機卿猊下から適切な処置がなされます。」
「枢機卿?」
「直属機関のトップの呼称だよ、副総督。 仕事は主に警察や軍では取り締まることの出来ない皇族や貴族、高位軍人などの処罰、人事だ。」
未だに内容を理解していないようである妹に、コーネリアがゆっくりと笑みを浮かべながら説明する。 なんとなく理解したのか、苦笑しながら難しいわね、とスザクを振り向いたユーフェミアが囁いた。 そうですね、と微笑を浮かべながら返したスザクを鋭い眼光で以って睨みつけたコーネリアが口を開いた。
「枢木スザク。来週の猊下の到着に貴様は姿を見せるな。」
「お姉様!スザクは私の騎士です!」
「それでもだ。猊下に副総督の騎士がナンバーズであると知れれば我がエリアの恥だ」
きっぱりといい放ったコーネリアに多少の不快感を感じながらも、スザクはただYes, Your Highnessと答えた。 申し訳なさそうにちらちらとこちらを見てくるユーフェミアに愛と忠誠が競り上がってくるを感じながら、 スザクはただ来るべき枢機卿に思いを馳せた。 かの枢機卿は差別などしない実力主義であるといい、と。



自由に縛られて生きて生きたい

2008年10月23日