「聞いてください、ルルーシュ!貴方に聞いてもらいたいことが沢山あるの!」
誇らしげに嬉しげに、そう話しかけてきた義妹は、勢い良くドアを開けて入ってきた。
「出て行け不届き物」
執務の邪魔なので、とりあえず追い出した。
Mattere, piviere
8. lamentoso 【悲哀をもち】
「・・・随分と勝手をやってくれたな、ユーフェミア」
「え?」
何のこと?とでもいうように、コテンと首をかしげたユーフェミアに、ルルーシュは大きなため息をついた。
斜め後ろのゲンブは何も言わないけれど、きっと同じようにため息をつきたいことだろう。
ルルーシュの、大きな呆れと侮蔑があからさまに混じったため息にさすがのユーフェミアも気付いて、
むっと眉を寄せながらケーキのフォークをおいた。
「もう、ルルーシュったら冷たい」
そういいながら再びケーキを口に含んだユーフェミアに、ルルーシュはケーキなんぞ出すんじゃなかったと後悔した。
「お前が何故ここにいる」
「・・・そう!そうだわ!」
ああ、思い出した!と飛び跳ねたユーフェミアは、
特大の一口をフォークで刺して美味しそうに頬を緩めながら紅茶を口に含んだ。
もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ後に、いそいそと持ってきたかばんからファイルを取り出すと、
じゃーん、とまるで宝物を公開するように表紙をルルーシュに掲げて見せた。
「行政特区日本のことで、ルルーシュに相談したいことがいっぱいあるの!ねぇ、手伝ってくれるでしょう?」
無邪気に笑うユーフェミアをみて、イラっと来たのは果たしてルルーシュか、それともゲンブか。
広げて見せてきた行政特区の内容を見せられて、呆れと嫌悪だけがこみ上げてくる。
そもそも、スザクはどこなのだ。何故護衛の一人も側近の一人も連れてこない?
それすらがもう、ユーフェミアの不出来をまざまざと見せ付けているようで、ルルーシュはその瞬間、
ユーフェミアに対する一切の加護の情と慈悲を捨て去った。
「―――もうやめだ」
「・・え?」
その言葉を聞いた次の瞬間には、ゲンブは既に騎士団に『その旨』を伝えるべく部屋を出て行った。
「ルルーシュ・・?」
ルルーシュは自分のケーキの最後の一口を食べきると、
ソファから立ち上がって自分の執務用のデスクに向かった。
持ち込んだモニターの電源をいれ、
わけがわからないというように困惑を湛えた瞳で見つめてくるユーフェミアをゆっくりと見る。
「・・・ユーフェミア・リ・ブリタニア。貴様は副総督としても、皇族としても―――不合格だ」
のどを詰まらせたユーフェミアを一瞥して、通信コードを入力する。
通信が繋がるまでの間に、ルルーシュは引き出しからファイルを取り出して、中身の書類に数枚サインをした。
愛すべき姉に悪いとは思う。
けれどこの産物は彼女の至らなさによるものでもあるのだから。
『・・・どうした、ルルーシュ』
「おはようございます。皇帝陛下」