廊下に下着が落ちていた時の対処法



ゼロ・ランペルージが寮の廊下を歩いているときのことである。
なにやらシャワー室のほうが騒がしかった。 正確に言えば、シャワー室の前の廊下が騒がしい。
「・・・なんだ?」
水回りで何か問題でも発生したのだろうか。
自分はアッシュフォード学園寮の寮長であるのだから、 そういった問題があるのであればきちんと把握し、そして対応したい。 なぜ自分に一番に報告が上がってこなかったのかという疑問は後に回すことにして、ゼロは足を進めた。

「どうした?」
「あ、寮長!」
生徒の一人がゼロに気づき、声を上げた。 廊下にわらわらと人だかりを作っていた生徒達の波をどいてくれ、という言葉と共にかき分け、中心に進む。 どうやら何やら興味深げに覗き込んでいるようである。 限りなく中心にいた副寮長であるリヴァルがゼロを目の端に止めて声を上げた。
「あ、ゼロ!」
「リヴァル、何かあったのか?」
「それがさぁー」
リヴァルが隣にいたスザクの肩をちょんちょんとつつき、ゼロに道をあけるように指示する。 それに素直に従い、少し身体をずらしたスザクに礼をいって、ゼロは輪の中心を除きこんだ。 そこには。
「なっ・・!」
真っ白なそれ。 うすく縁取られたレースは清純そうで、 しかしうっすらと挿してあるピンクではなくしっかりとした赤色はなんとなくイケナイ気分にさせる。
「な?な?びっくりするだろ?誰のだろーなー?」
興味深々なリヴァルがゼロの反応に気を良くしたように興奮し始めた。 もしかして会長のかな、どう思う?うーん、ミレイ会長はどっちかっていうと黒だと思うんだけどなぁ、 というリヴァルとスザクの会話をどこか遠いところで聞き、ゼロは固まった。 他の人には見えない聡明な頭脳が目まぐるしく回転している。
そう、アッシュフォード学園男子寮「KING」のシャワー室の前にポツンと落ちていた真っ白なそれは、 明らかに女物である、パンツだったのである。 男共が興奮気味に持ち主を邪推しているなかで、唯一、はからずしも犯人を知ってしまったゼロは、 いっせいに心の中で滝の汗を流した。 ちなみに、寮生の誰かが女子寮まで下着を盗みにいったとは思わないのがこの寮生の特徴である。
(猛者だらけの女子寮に、誰が堂々と下着泥棒を決行できるというのか)

なんで、ここにC.C.の下着が・・・!?

どうすればいいのか。
ここでゼロがその下着をひろったとしよう。 そこで『ゼロ、誰のかわかんの?』と聞かれたときに、『わかる』『わからない』『さあ?』どれがいいのか。 『わかる』ならば確実に問題だ。
逆に『わからない』でも、じゃあなんでお前がその下着を拾うのだという話になる。 (寮長なんだから正当な権利があるんじゃないのかとかいうツッコミはこの寮において存在しない。)
汗水が内心だらだらなゼロの隣に、『ゼロ、下着を忘れてしまった』とC.C.が堂々と並ぶのはそう遠くない話。



ゼロとC.C.は別に付き合っているわけでもなんでもありません。

2009年1月7日