Something True

この世に確かな物なんて、果たしてあるのか。 自分達の存在をよく理解しているつもりだからこそ、そう思ってしまう。 一つの体を二つが共有している感覚。 人格が交代するときの、良く分からない浮遊感。 それらを感じる度に、自分達の存在の不確かさを実感して、 そしてどちらかが話しかけて、それが返って来る感覚に、生きていることを実感する。

「咢!」
『・・・なんだ?』
「あ、ゴメンね。寝てた?」
『別に。暇だっただけだよ』
「そっか。あのね、この宿題さぁ、分からないんだけど」
『・・・俺ら脳は同じだろ?』
「でも考え方とかは違うから、咢と僕で得意なのと不得意なのあるんだもん」

・・・・・・それもそうか。 本当に、たまにだけれど、どうして双子じゃなかったのか、と思う。 それか、何故二つからだがないのだろう、と。 もう一つからだがあったのなら、きっと亜紀人を思いっきり抱きしめてやれるんじゃないのか。 偶に一人で泣いている亜紀人のそばに行って、抱きしめてやれたら。 ソレが出来ないことが、何よりも不快だ。

亜紀人は言うのだ。 『僕は咢さえ居てくれれば何もいらない』・・・と。 可笑しな話だ、と思う。要約すれば、 『自分さえ居ればいい』 と言っていると同じ事だ。・・・普通ならば。 けれど自分達は『二重人格』というには別々すぎて、お互いを違う人間だと意識していて。 しかし『別々の人間』と言うには、二人は同じすぎて、近すぎていた。

何が本当なのか、偶に分からなくて不安になる。 どちらが存在しているべきなのか・・・。 これは明らか。この体は元々亜紀人のものだから、実際の所有権は亜紀人にある。 しかし咢にとってもこの身体は認識さえ違えど『自分のもの』であるから、どちらともいえない。

でも咢は、偶にとてつもなく不安になる。 どちらがいつ、『本物』と『偽者』になってしまうのか、分からない。 だが出来れば亜紀人には、ずっと幸せに笑っていてほしい。 その太陽のように綺麗で美しい笑顔で、咢を幸せに満たして。

「ね、咢」
『なんだヨ』
「ずっと一緒にいようね」
『ああ?』
「僕、咢の事大好きだから。咢が居ないと、何にもできないから」
『・・・・・・』
「ね、大好きだよ咢。だから、ずっと一緒にいようね。」
『・・・ああ・・・』



ソレは、不確かだけれど本当にそこにある、

Something True。