神への反逆 2



一週間経っても神田の姿は見えず、リナリーは焦りながらも任務かもしれないのだからと自分の心を落ち着かせた。けれど神田が任務に往っているという話も聞かず、連絡の一つもないことから、リナリーは盛大に焦り始めた。探しに出たかったけれど、この牢獄のような場所から自分は出られない。一定の範囲にとどまることしか、自分は許されていない。
けれどどうしても知りたくて、リナリーは夜中にそっと部屋を抜け出した。階段を降り、自分がよく繋ぎとめられる、実験台のある部屋までたどり着いた頃には、リナリーの足は竦みあがっていた。それでも中から複数の声が聞こえることに興味を覚え、リナリーはそっと薄い壁に耳を当てた。

流れてきた情報は、神田の絶望を悟らせるものだった。

「っ・・・!!」
息を呑み、悲鳴を上げそうになりながらも手で口をふさぐ。一目散に部屋に戻ったリナリーは、床にへたり込んで涙を流した。
まだ幼いリナリーには所々の言葉の意味を正確には理解できなかったけれど、咎落ちの実験を見ていた事もあることから、大体のことは把握できる。使徒人造実験。第二エクソシスト。中央庁。アジア支部。チャン家。エプスタイン一族。―――神田ユウ。
咎落ちの時のように使徒をつくる。けれど今度の実験体は純粋なエクソシスト。

「ゆぅ・・・っ」

笑顔をくれたのは彼だった。ぶっきらぼうで愛想が無く、それでもリナリーが真に望む時にはいつだって手を差し伸べてくれた、優しい人。何も出来ない。その事実が歯がゆくて、リナリーは唇をかみ締めた。


ごめんねごめんね、部屋にいないあなたに嘘つきなんていってごめん

2011年8月23日 (2010年9月5日初出)