3. 変えちゃダメです、つらいけど



中忍試験第一試験を十分後に控えて、サクラはそっと溜息をついた。
周りを見渡せば、自分たちだけが知っている、後々死ぬ人、引退する人、敵になる人。できる事なら不穏な未来は今の時点で摘んでしまいたい。ナルトの手によって我愛羅を改心させ、リーを救い、カブトをこの手で殺したい。けれど三人はそれをしないとカカシと固く誓ったのだ。変えていい未来と変えてならない未来は必ずある。その線引きを見誤ってはいけないと。おこるべくしておこる事は、サクラ達にはどうする事もできない。

ナルトには今日までの一ヶ月程で、七班総出で隠密系の忍具の扱い方を教えこんだ。ナルトも現実世界では上忍であるから、もちろん忍具の扱いは同じ境遇であるサクラ達以外のこの部屋にいる人間の誰よりも上手いけれども、それはあくまで戦闘用の手法だ。ナルトの忍具の扱いかたは総じて派手で、敵に見つかりやすい。今回の不安要素は、彼の運。ナルトが運良く、元来頭が良いか、もしくはこのテストのシステムにいち早く気付いて正しい答えを写して行く人間の近くに座れるかが問題だ。
零点さえ回避できるのならそれで良い。だからナルトには、四十五分をフルに使って、一問だけ答えさせようと決めたのはサクラとサスケだ。一問だけのために四十五分という時間を使えば、たとえ付け焼き刃でもカンニングは成功するだろう。
完全にズルだな、とサクラは思うけれども、まぁ仕方がない。これも実力のうちよねと割り切って、サクラは気持ちを切り替えた。サクラがサスケより後方の席に座らない限り、サスケがサクラの答案を写輪眼で丸写しする事は決定事項だ。
席が割り振られ、各自席につく。上々だ。ナルトとサクラは同じ長机の端同士で、サスケはサクラの斜め遥か後ろ。運も味方につけちゃったのかしら。ちょっと気分が高揚して、サクラはくすりと笑みを浮かべた。



不確定条件の想定と力学的エネルギーの解析を応用した融合問題?へそで茶ぁ沸かすくらい簡単よ