今日もまた笑って



思えばずいぶんと不純な―――自分からしてみれば素晴らしい―――理由だったと思う。 自分の価値観に、自分の美学に全く沿わない武器など、どれだけ強くとも選ぶわけにはいかず、 死神の息子でありながら武器選びにあまりやる気は見出していなかった。 そんな時に見つけた姉妹は姉妹らしく身長も違えば髪の長さも違い、胸の大きさも違ったわけだが、 一度武器に変身すれば見た目も重さも、性能も全く一緒の素晴らしき二丁拳銃にはや代わり。なんとすばらしい!
そうして自分の武器になってもらってからもうすでに何年もたつ。 いわば家族?恋人でもないし、だからといってパートナーだけというのもなんだか薄っぺらい。 まさしく家族。同じ家に住んで、同じ食事をして、三人のうち誰かが辛い思いをしたならば、家族川の字で一緒に寝る。 そういった愛を与えて、与えられて、あこがれてあこがられて。
「リズ、パティ」
「へいへい」
「ほーい」
ポケットに両手を突っ込んで歩き始める。 ついで両肩に降りかかってきた二人分の重みにあきれ半分嬉しさ半分にじませて、キッドはポケットから手を出した。 リズとパティの腰に手をまわしてくっついて歩く。どうせやるのなら完璧に。
「よし。リズ、パティ、三人六脚だ」
「ええぇ〜?」
「だぁめだよお姉ちゃん、そういうときはなななんだとぶたやろー!やってるやるぜっていうんだよ」
「のるのかよ!」
「のるんだ。さ、行くぞ。パティ、お前は左足。リズは右足からだ」
「ちょっ、まて!お前それ歩けないじゃん」
「お前達二人に右足からやれと?冗談じゃない。そんなことしたら完璧なるシンメトリーが崩れるだろう?」
「お前は!?」
「俺は大丈夫だ。さ、やれ」
「出来るか!」
といいつつも律儀にキッドの言うとおりに実行したリズとパティは、次の瞬間思いっきり後ろ向きにたおれ、 ゴンっ!と激しい音を立てて頭を床に強打するキッドを目にすることとなった。 だからいったのに・・・と、目を回してらっしゃるこれでも死神様の子を抱き上げる。 ぐったりとしているため起こすのは少し骨が折れて、パティに手伝ってもらいながら背中に回した。 細いくせに、結構重い。やっぱり身体作りとかしているからか、と思うと、 この不思議な弟がちょっとかっこいいいきものに見えてきてしまった。危うい。
「よーし、パティ、帰るよー」
「ぶー!」
最近の妹はぶーというブタさんの鳴き声をまねするのがどうにもお気に入りだ。 鼻の穴を頑張ってどうにか広げようとするその姿は、可愛らしい顔と抜群のプロポーションには似合わない。 しかし何故か彼女の性格にはマッチしてしまうのだから、つくづく妹は不思議な存在だった。
数分後には何とか意識を取り戻したキッドを背中から下ろして、今回はちゃんと三人で歩く。 相変わらずポケットに手を突っ込んだまま歩き続けるキッドの腕に腕を回して、リズとパティは邸への階段を上り始めた。 キッドは非情に歩きづらそうだけれども、気にしない。
今日の夕飯は特別にすき焼きだ。すき焼きを食べて、デザートにはチョコデラックスパフェと暖かい紅茶。 就寝前には眉毛と肌のお手入れをして、今夜は仲良く三人で眠ろう。 何、どうせ明日は学校などないのだから、自由気ままに日が高くなるまで眠ればいい。
「キッドくんキッドくん、すき焼きの卵は何個まで?」
「何個まででもいいぞーパティ!ただし、全員同じだけだ!」
「えぇ!?やばいじゃん!パティが十個使ったらあたしらも十個使わなきゃなんないじゃん!」
「気にするなリズ・・・お前ならやれると、信じてる。」
「無理だよぉ・・・太るよぉ・・・」



ソウルイーターでは、この三人組が好きです。ナチュラルにいちゃこく姿がたまらん。 いっつも三人でくっついてくれてたらいいのに。

2008年12月19日