第一回部長ぶってた手塚国光を偲ぶ会



「あー・・・疲れた」
「「お疲れ手塚ー」」
「どうも」
パンパーン。
クラッカーの音を口で真似して、俺と不二は手塚を祝った。手塚はぼけーっとテーブルに肘をついて、ひらひらと手を振っている。おっさんみたいなため息をついて、手塚はアホのように口をひらいた。
「ちょっと乾、手塚のグラスはどこにいったの」
「ここだよ不二、はい手塚」
「いらん、誰がお前の飲み物なんて飲むか。すみません、カフェオレ一つ」
「まぁまぁまぁまぁ乾杯しようよ、じゃあ手塚音頭とって」
「ああ・・・。やめろ乾、お前のものは飲まない。・・・はい、では今まで部長ぶってた俺についてきてくれてありがとう。部長ぶってた俺は今日の引退式をもって死滅、もとい消滅しました。とゆーことで第一回部長ぶってた俺を偲ぶ会、乾杯」
「「かんぱーい!」」

「いやホント、二年も部長職頑張ったよ手塚。何かある度にグラウンド10周だ20周だ何周だっつってさぁ」
「言い渡した後の凄く申し訳なさそうな手塚の眉がもうホント俺痛々しくて」
「俺が今まで一番走らせたたのは誰だ?桃城?越前?大穴で荒井か?」
「いや、桃でしょ。君あいつに100周走らせたんだよ三日間来なかったからって」
「アレは酷だったな」
「いや、だが俺は最初休んでた三日分をお前ら二人のイビリで済ませてやろうと思ったんだ」
「あ、それは100周にして正解だよ」
「うん、俺達のイビリは半端ないからね」
「だろ。俺結構優しい事しただろ」
「うんうんそうだね、手塚は優しい部長だったよ」
「本性さらけ出してたらもう腹黒部長だったよ」
「お前にだけは言われたくない、不二。あ、すいませんクッキー&キャラメルチーズケーキください」
「僕はキャラメルナッツコーヒーロール」
「何それ美味そう」
「後で分けてやれよ、不二。あ、僕は抹茶デニッシュで」
「「趣味が悪い」」
「なんだと。・・・すいません、じゃあやっぱりシナモンチュロスで」
「「はぁ?」」
「・・・カシス&ラズベリーサワークリームシフォンで」
「よし」
「良かったね手塚」
「ああ」
「とる気マンマンだな!!」

「で、越前なんだが」
「ああ、越前てお前に夢見てるよね」
「見てる見てる」
「あの純真無垢な『ぶちょー』みたいな目で見られる度に、俺はあのほっぺをむにむにぐにぐにしたくて仕方がなかった」
「「それはわかる」」
「頑張って耐えたぞ、俺。腕組んでふんぞり返って『なんだ、越前』とか言って、かなりこらえたんだぞ」
「かわいそうに、手塚」
「君この二年間、好きな事あんまりできなかったよね」
「だから今日のこの会があるんじゃない。手塚、今日は食って喋って飲み明かそうね」
「ああ、俺そのうち口の筋肉衰えるんじゃないかってくらい学校で喋れなかったからな」
「ホントかわいそう。英二と桃が南米キャンディースのいずちゃんの話で盛り上がってた時も参加できなかったしねぇ」
「俺のいずちゃんトークは凄いぞ」
「知ってるよ。おまえ異様にいずちゃん好きだよね」
「いずちゃんと結婚してもかまわない」
「それは俺たちがお断りだよ。頼むからやめてくれ」
「知ってる手塚、越前って南米の山くんが好きなんだよ」
「なんだと」
「いつか南米トークで盛り上がれるといいね」
「俺たち以外の部員にカミングアウトなんてできやしないよ、大石が卒倒する」
「俺がしゃべらなかったのは半分大石の責任もあると思うんだが?」
「ああ・・・・あいつ気ぃ利きすぎだよな」
「『おい大石(この前お前に貸した部誌どこにやった?)』て聞く前に」
「『ああ手塚、あれなら机に置いておいたよ』」
「『・・・そうかわかった。ああ、あと』
「『ああ、あれは俺が竜崎先生に渡しておいたよ。ついでだったし』」
「『・・・そうかありがとう』」
「どんだけ俺に喋らせたくないんだあいつは!」
「てゆーかどんだけ手塚の心読んでんだよ!」


「お待たせいたしました。こちらクッキー&キャラメルチーズケーキでございます」
「あ、僕です」
「キャラメルナッツは僕です」
「クリームシフォンもこっちにおいてください」
「え?おい手塚それは俺の」
「手塚に何か文句があるの乾」
「いや無いです・・・」
「だろうね。はい手塚、あーん」
「あー・・・・。・・・一人で食べれる」
「離乳食卒業した幼児みたいなこと言ってんじゃないよ。はいあーん」
「・・・あーん」
「お前らほんと仲いいな」
「手塚って何気に姉さんとも仲良くない?いったい何の話をしてるんだよ」
「お前の過去の恥ずかしい話とか」
「ハァ?」
「ぜひとも聞かせてもらいたいな手塚」
「いいだろう耳を貸せ」
「・・・マジ十歳差って勘弁してほしいよ・・・」
「ほうほう・・・・ほうほうほうほう」
「ちょっとなにメモってるのさ乾・・・ちょっお前ちょっ・・・そのノートを寄越せぇえええ!」
「死守しろ乾!」
「がってんだ!」
「ちょっとマジふざけんじゃないよ姉さん君に何いったのさ!」
「なんでも無い、忘れてくれ」
「なんでも無いわけないでしょふざけてんのか」
「じゃあわかったこうしよう」
「なに?弁明なんて聞きたくないよ今すぐそのノートを燃やすか僕が君の眼鏡をスペアもろごと焼き払うよ」
「焼き払え!」
「もー手塚は黙っててよ!ゴミのよーにしてやろーか!」



「にしても手塚はやっぱり海堂を部長にしたんだね。僕はてっきり桃に部長をさせて、海堂に副をさせると思ったんだけど」
「桃城はどっちでもいけそうだが、海堂は部長にした方がいいんじゃないかと思ってな」
「うちはずっと手塚と大石で慣れてるからね。海堂が引っ張って桃がバックアップという形の方が成功する確率は高い」
「海堂厳しいもんね・・・・名前可愛いけど」
「ああ、二年の中じゃ俺のお気に入りだったな・・・・薫ちゃんだけど」
「俺も海堂とは何度かペアを組んだ事もあって仲よかったほうだと思うんだよ。あいついい奴だよホント。・・・・スカートはいてたらしいけど」
「見たい」
「見たいね」
「見たいよ」
「俺が命令したら着てくれると思うか・・・・・・?」
「誰が頼むより可能性高いね。手塚誕生日にそれおねだりしてみたら」

「そういえば最近困ってる事とかないの?手塚」
「困ってる事?」
「困りそうな事でもいいよ」
「そうだな・・・部活がなくなってヒマになりそうで何をして過ごそうかと」
「うわー定年退職しちゃって何して過ごせばいいかわかんないサラリーマンみたいな事いってる!」
「ビンタするぞ」
「ごめんやめて手塚のビンタ超いたい」
「お前らだって同じようなものだろう」
「まぁねぇ・・・そりゃあねえ」
「あああと困るといえば」
「いえば?」
「真田がな」
「立海の真田が」
「骨董品の話をしてくるんだ」
「「骨董品・・・・」」
「どこそこの壷は本当に精巧なつくりでとかそういう話をな」
「あ・・・ああ〜〜〜〜〜・・・」
「この間のだれそれ巨匠の新作は見たか?本当に素晴らしかったな!とかそういう事をだな」
「ああ〜〜〜・・・・」
「俺全くわからない」
「ああ〜〜〜・・・・」
「そうだな、とかああすごかったな、とかそうだなあの色彩がな、とか適当な事言ってごまかしてるんだが、最近ちょっとつらくなってきて」
「・・・・」
「俺の事を本気で骨董好きと認識したのか、『手塚は誰の作品が一番好きなんだ??』とか聞かれて知らねーよ!って・・・思うんだ・・・」
「ああ〜〜〜・・・・」
「やっぱり最初のうちに骨董の事は解らないというべきだったか・・・?」
「ていうか興味もないでしょ手塚」
「無いな」
「もう、わかってないなぁ二人とも」
「ん?」
「金輪際あわなきゃいんだよ」
「・・・鬼だ、鬼がいる」
「ああ、とんでもない鬼だ」
「マジ食い殺してやろーか」

「って、もうこんな時間?」
「ああっ手塚が最後の一口食った・・・!」
「諦めなよ」
「ふぉうふぁふぉふぁうぃふぁえおふぃうい」
「ごめんなんて?」
「そうだぞ諦めろ乾つってんだよ。理解悪いなぁ乾」
「いやお前の理解がすごいだけだろ!」
「不二をなめるなよ」
「お前が言う事か!」
「どう手塚、今晩泊まってかない?」
「今晩どうみたいな言い方やめろ!」
「うるさいな乾、AVの見過ぎなんじゃないの?」
「まったくだ。そういえばお前がこの前押し売りのように貸し付けてきたやつ、まだ見てなかったな」
「二週間も貸してるのに!」
「いや、お前のチョイスだと思うとちょっと手が出なくて・・・」
「ああ、わかるわかる。青汁プレイとかしてそうでちょっと怖いよね」
「この汁が欲しけりゃピーしてみろや的な」
「自作・・・?」
「えっ・・・」
「ちょっと妄想広げるのヤメテヨ!!」
「うるさいよ乾」
「グラウンド千周!」
「ひどいよ!」



pixivより収納。こんな感じの青学3トップがいいなって書いてるときは夢見てました

2014年6月22日(初出:2012年1月6日)